高校でならった化学の基本的な原子の話とか、ハーバー・ボッシュ法みたいな化学反応とか、当たり前のようにある概念、事実、知識としてただただ教わったことを覚え、テストで正解できるように頑張る
そんな勉強だけじゃもったいなかったなと思わされる本です
今は普通にみんな知っている化学の知識も昔に誰かが発見してくれたから僕たちは知っているわけで、それまではいろんな科学者が試行錯誤してそれでも明らかにならなかったり、ふとした思い付きが大きな発見につながる瞬間があったり、それぞれのストーリ-があるんです
それを知ると、もはや化学はただの知識や数式ではなくて、ストーリーのある歴史でより現実味を感じられるんじゃないでしょうか
”絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている”は原子の発見から石油化学など現代の化学にいたるまで、さまざまな化学のトピックの歴史を解説してくれています
ただただ丸暗記しているだけの化学反応式の裏側にある物語をこの本で覗いてみましょう
すべてのものは火、空気、水、土でできている?
今となっては僕たちの身の回りのものは様々な原子で構成されていることが常識になっていますが、昔はそうではありませんでした
ある人はすべてのものは水でできていると言ったり、別の人は空気でできているといったりしていました
アリストテレスの場合元素はただ一種類の第一物質しかなく、火・空気、水・土の四つの形をとり、熱・冷・乾き・湿りの組み合わせによって互いに変化すると考えました
つまりこんな感じ
第一物質に熱と乾きという性質が加わると火が現れる
第一物質に熱と湿りという性質が加わると空気が現れる
第一物質に冷と湿りという性質が加わると水が現れる
第一物質に冷と乾きという性質が加わると土が現れる
感覚的にはなんとなくわかるような感じがします
こんな風に物を構成する元素は何かしらあるということは昔からみんなそう考えていて、現象をよりうまく説明する考え方を考えていたんですね
夢の物質の暗転 DDTとフロン
DDTとは有機塩素系殺虫剤のジクロロジフェニールトリクロロエタンの略です
ドイツのヘルマン・ミュラーは、虫が食べなくても、虫の体についただけで麻痺させるような毒をつくって殺虫剤にしたいと考えDDTを発見しました
DDTは蚊、ハエなどの昆虫に強力な殺虫力を発揮し、しかも安価だったため世界中で広く使われました
この殺虫剤のおかげで衛生状況が改善されDDTは感染症の撲滅に貢献しました
ですが、後からDDTが自然環境に長く残存することがわかり生物の体の中で食物連鎖を通して徐々に濃縮されることがわかりました
これによって生き物が大量死することがあり、こういった化学物質の自然界への影響をレイチェル・カーソンは”沈黙の春”で指摘しました
強力な殺虫作用をもつDDTにもいい面ばかりではなく、悪い面もあるということがわかり、今ではマラリア予防のために限定的に使用することは認められているものの、先進国では使用を禁じられています
もう1つの夢の物質がフロンです
冷媒と呼ばれるそのものの気化熱を利用して物を冷やす作用のある物質がいくつか検討されてきました
古くはエーテルやアンモニアが用いられていたころもあったようですが、可燃性だったり、有毒だったり、ひどいにおいがするという欠点がありました
そんな中発見されたのがフロンでした
フロンを発見したトマス・ミジリ―は派手なパフォーマンスでフロンの安全性を印象付けました
そのパフォーマンスはフロンを口に吸いこんで、ろうそくの炎を消すというものでした
これは不燃性と無毒性という、従来のエーテルやアンモニアが抱えていた課題を解決するものでした
こうして理想的な冷媒として開発されたフロンは電気冷蔵庫に使われるようになっていきます
また、他の物質と反応せず、液体から気体になりやすいという性質を生かしてスプレーの噴射剤として使われたり、半導体産業で洗浄剤として使われたり、建築用断熱素材の発泡剤としても使われました
こうして1928年に合成されてから多くの用途で使われるようになったフロンですが、1980年中ごろ地球に異変が起きていることがわかります
地球の外からやってくる紫外線を吸収する役割を持つオゾン層が減少していることが分かったのです
そしてこの原因がフロンによってオゾン層が破壊されたためということもわかりました
地上では他の物質との反応が不活性なフロンもオゾンとは反応してしまいオゾンを酸化してしまい、オゾン層を破壊してしまっていたのでした
こうした化学の失敗は今後も起こりうるものなので、何か異変が起こった時には素早く対処する必要がありそうです
他にも歴史エピソードと化学は切っても切り離せない
この記事で紹介した化学の歴史以外にも歴史の授業で勉強したことと化学は密接に関係していたり、化学の発見やその化学者の人生など見てみると面白かったり意外なエピソードがたくさん書いてあります
今は平面に見えている化学の知識にも歴史を知ることで奥行きが出てきます
”絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている”を読んで、ぜひ今より深い化学の理解を得てください
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